2018年2月23日金曜日

Session1-2 王都の商人

二人は傭兵、毒蛇は賞金稼ぎ



 バンボクは、王国内で並ぶ者のない豪商である。いま最も力のある貴族のフラット家と繋がりが強く政商とも言えるだろう。身分の低い出身で、フラット家の汚い仕事も相当に請け負っているという。
 これを狙う暗殺者が相当な手練だとしても簡単ではあるまい。入念な下調べを行うはずと考えた三人はその痕跡を掴むため、バンボクの屋敷の裏口を見張ることの出来る家を借り入れ、周辺を巡回や情報収集を始めた。
 そして5,6人の見慣れない男たちが屋敷の付近でよく見かけられるという情報を得た。
 毒蛇は「俺はバンボクの大きな動きを探りに行ってくるので、その連中の事は任せる」と二人に言い残し、出ていった。
 数日後の夜、屋敷の付近を行ったり来たりしている男が三人いるのをヨイチが見つけた。
 ヨイチとゴンザは酔っぱらいのフリをして三人に近づいた。芝居が不味かったようで、二人をみると、反対方向に足早に三人はその場を立ち去ろうとした。
 それをみるやヨイチは素早く短剣を懐から取り出すと一人の足めがけて投げた。男は悲鳴をあげて倒れる。他の二人は一目散に逃げ出した。
 ヤサに男を拉して、二人は尋問を始めた。男は貧民街に住むゴロツキだった。ある男に雇われバンボクの屋敷を調べていた。その男の特徴は毒蛇から聞いていた三人の暗殺者の一人の特徴と一致した。そしてゴロツキは男に定期的に報告をする、それは明日である。という事を白状した。
 二人はゴロツキに小金をわたし協力させることにした。合う場所はとある酒場だ、ゴロツキと二人は少しタイミングを外しその酒場に入店し、男が来るのを待った。
 はたして男はやって来た。男はゴロツキの前に座るとすぐに男の怪我に気づきそれを問いただした。ゴロツキは言いよどむ。二人は立ち上がり男を取り押さえようと飛びかかった。
 しかし男は二人をひらりとかわし、外に飛び出した。ヨイチは素早く短剣を男に投げたが、男の腕をかすめただけに過ぎなかった。あとを追ったが男に追いつくことはできなかった。
 二人がアジトに戻ると毒蛇が戻っ来ていた。
「どこに行っていた?」ヨイチが尋ねる。
「バンボクと付き合いのある商人連中を当たっていた。バンボクは三日後に狩りに出かける、数日狩場に滞在する予定だ」毒蛇が答えた。
 バンボクの屋敷は広大な上に警備は厳しい。忍び込んで暗殺するのは困難だ。この機会を暗殺者は逃すまい。そう三人は結論づけた。
 三人はすぐに出発の準備を整え、狩りが行われる森に向かった。バンボクの別荘を中心に森を調べた。襲撃に適した場所を探し出す為だ。その過程で真新しい人の足跡をゴンザは見つけた。
 予定の通り三日後に出立したバンボクの一行は到着した。総勢20人そのうちの4人は武装しており護衛の役を務めているようだ。
 三人は狩りをするバンボク一行を尾行しながら、襲撃をまった。そのうちバンボク一行は襲撃に適したと場所のひとつに向かっていった。
 そこは少し開けた場所で、バンボクは召使いたちが獲物を追い立てて来るのを待っていた。
 ヨイチは付近に数人の人間が潜んでいるのを見つけた。それはだんだんとバンボクに近づいていく。
 遠くで犬が吠えた。暗殺者たちは一気に飛び出してバンボクを取り囲んだ。護衛たちは剣を抜き主人を取り囲む。
 ゴンザと毒蛇も武器を手に飛び出し、ヨイチは長弓に矢をつがえる。
三人が飛び出してきたのをみるや、護衛と暗殺者たちは一斉に三人に向い武器を構えた。森の奥からは大勢の人間がこちらに向かってくる音がする。
「やっと捕まえたぞ!蛇め!」バンボクが叫んだ。
二人が毒蛇を見ると、毒蛇は度を失い半ば呆然としている。
開けた場所では勝負にならない、森のなかに一旦逃げ込む。森に入ってきた敵の一人をヨイチが射殺し、ゴンザと毒蛇も他の敵と戦い始めた。
 数人を斬り捨てたところで、森の奥からドワーフの一団が現れた。ざっと見たところ30人ほどで完全武装している。黒っぽい鎧には稲妻をかたどった紋章が描かれている。
 ゴンザもヨイチもその紋章に見覚えがあった。傭兵団・雷鳴―ドワーフ族の名門グラームズ家の者が中心となって結成された傭兵団だ。名門の家が作ったくせに雷鳴は引き受ける仕事を選ばない。ただの戦闘や戦争から、後方の撹乱、要人の暗殺・拉致……およそ荒事であれば、それが家名を汚すような汚い事も(時にはそれが目的かもと思われるような仕事でも)平気で引き受ける。
 雷鳴の名の由来は彼らが銃を使うことである。戦場で雨雲もないのに雷鳴のような轟音が響く時、兵士や傭兵たちは戦場に厄介なドワーフの傭兵団がいることを知るのだ。
 今度はヨイチとゴンザも度を失った。三人は目で合図すると身を翻して逃げ出した。息が続く限りに走り続ける。時折、轟音がし回りの木々が弾ける。
 ドワーフたちの足は遅い、段々と距離は開いていった。だが止まれば必ず追いつかれる。傭兵団・雷鳴の追跡技術は確かなものだ。
 毒蛇は走りながら言った。
「このまま20キロほど前進すれば、妖魔の森に入る。そこで奴らを撒こう」
妖魔の森はゴブリンの大呪術師が支配していると噂される森だった。三人は走り続けた。
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