2018年4月29日日曜日

Session2-3 東方のラクシャ

三人は傭兵、その本はネクロノミコン

三人はまた再び荒地を旅し、海岸まで戻ってきた。ある港町を拠点にし黒い船の情報を探し集めた。黒い船は海岸ぞいの村や町を襲い女子供を誘拐しているという。都から派遣された討伐隊の船も黒い船の行方を追っているが、いつも深い霧に阻まれ何も出来ないでいた。また討伐隊は黒い船には魔術師が乗っているという噂を恐れ、さほど熱心に追跡をしていないということであった。

 三人は漁村を周り、家族が誘拐された漁師を集め協力を頼んだ。多くの漁師が情報を集めてくれた。ある無人島が大きな船も隠せる入江があり怪しいという情報があり、三人は漁船に乗りその島に向かった。漁師は明日の昼にまた来ると約束し三人を置いて去っていった。
 三人を海岸線を捜索した。果たしてあの黒船はあった。入江に隠すように停泊していた。船に人影はない。
 三人は人の痕跡を追い島の奥に入って行った。森の奥に開けた場所があり、そこに10軒ほどの小屋が建っており、あの黒い手形の兵士が駐屯しているようだ。
 ブライが偵察し詳しく知ることが出来た。幾つかの小屋に女子供が監禁されている。広場のような場所に大きな祭壇と焚き火の用意をしている。
 三人が立てた作戦はこうだった。ヨイチとゴンザが兵舎に火をかけ混乱させ、その間にブライが女子供を逃がす。そして混乱に乗じ仮面の男を強襲する。
 三人が襲撃の準備を開始した頃、仮面の男は手下に命じて火を起こし、10人の女を連れてこさせた。今から夜の月食までに100人の生贄を細かい儀式に従い捧げなかればならない。島は魔術で守られている、討伐隊がやって来たとしても深い霧が侵入を阻む。邪魔はない、仮面の男は長い長い儀式を始めた。
 炎が各所で上がった。幸運にも助けられゴンザとヨイチは首尾よく放火した。黒い手形の兵士たちは消火にを始めた。ブライも混乱に乗じ女子供を解き放って海岸に行くよう指示した。
 ゴンザは祭壇まで走った。祭壇では仮面の男が女の首を奇妙な短剣で次々と切っている最中だった。女たちの首が切られ、仮面の男の口から呪文が漏れる度に炎の上の辺りの空間が奇妙に光を失っていった。ゴンザは仮面の男に突進したが、それを護衛の兵士たちが阻んだ。仮面の男は動揺した、なぜここに僅か一人とは言え侵入する事が出来たのだ?
 ゴンザは多勢に無勢だったがそれを物ともせず戦った。すぐにヨイチとブライも駆けつけ戦いに加わった。
 ゴンザは目の前の兵士を切り捨てると、仮面の男に迫り顔面に剣を叩きつけた。仮面と言うより岩を叩いたような感触をゴンザは感じた。仮面には少しヒビのようなものが入ったが仮面の男は平然としている。
 仮面の男は呪文を唱え始めた。そしてまたその両手には黒い火炎の蛇と雷鎚の蛇が現、二匹の蛇はゴンザを襲った。ゴンザは盾を構えた。二匹の蛇は盾に当たると吸い込まれるように消えてしまった。仮面の男はゴンザの盾を見て動揺した。
 ヨイチが仮面を目掛けて矢を放った、男の仮面は割れ地面に落ちた。それと同時に黒い手形の兵士たちはバタバタと倒れ始めた。
 仮面の男―もう仮面はないのでラクシャと呼ぼう―は奇妙な叫び声をあげた。
 炎の空間はどんどんと光を失いすでにそこだけ夜のようになっていた。今では遠くに星々すら見える。ラクシャはその空間に身を投げるように跳躍した。そして消えてしまった。
 三人は最初呆然としていたが、暫くすると祭壇を壊し始めた。祭壇が壊れるごとに黒い空間は小さくなっていく。突然、タコの触手のようなものが黒い空間から出てきた。そしてなにもない空間を掴むようにして何かが這い出てきた。
 それは巨大な2mくらいある蟹のような怪物だった。しかしその怪物には足はなく代わりに10本くらいの触手が生えている。そして甲羅の上には人の顔が張り付いていた。その顔は空間に消えていったラクシャだった。
 ラクシャはゴンザに襲いかかった。ブヨイチも弓を槌矛に持ち替えゴンザに加勢する、ブライもだ。ラクシャと三人の激しい戦いが始まった。
 ゴンザがラクシャの足を剣で切り落としラクシャがバランスを崩した。そこの隙をブライは逃さなかった。跳躍すると三日月刀を深々とラクシャの顔に深々と突き立てた。ラクシャは死んだ。
 本は祭壇から見つかった。三人は迎えに来た漁師にワケを話し、他の船を呼んでもらいさらわれた女子供たちと殺された女の遺体を送らせた。また黒い手形の兵士たちは全て死んでいた。ドゥルマ家の者たちのも含まれているので三人は遺体を城まで運んだ。ヴェルサオは三人が逃げ出したことを咎める事もなく、三人に厚く礼をした。
 その後、三人はラギに本を届けた。
「これだ、これだ。よしこれでお前らへの貸しはチャラだ。どこへでもいけ」
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